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シロクマの涙
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地球温暖化〜シロクマの母子
(その二)シロクマの子供は、二頭だ。 シロクマの出産は、二頭だ。一頭や三頭はまれだ。四頭はほとんどない(Note )。 チャーチル駅には、カナダ公園公社がある。極北について知りたいことがあると、訪ねることにしている。 "三頭の子連れの母子はほとんど見かけなくなった。2003、2004年では2頭連れですら少なくなった"とカナダ公園局のカーム・エリオット博士,Cam Elliot 、Parks Canada、Churchillは話す。”結氷する期間が少なくなって、それだけアザラシ狩りができなくなったからだ"と、気候変動のシロクマの影響を指摘する。 ”カーム!それなら何とか保護することを考えないのですか?” ”シロクマの子供を守るためですか?でもこれが自然と言うものです"とさりげなく話す。 日本では、野生動物の保護の目的で餌づけに成功した事がニュースになるが、自然界の掟破りかも知れない。ここにいると、観光化の目玉にと言う魂胆が透けて見える。 * ”ブライアン!子グマは一頭だけか?”。 "Hisa!あの子グマは、もう二歳だな。母グマと同じくらいの大きさになっている。来年の春には、母親から自立するだとう。なかには三年半も母子一緒の場合もあるが、それはまれだ。 それまでに 母グマから全ての技を受け継がなくてはならない。何が危ないか、アザラシ狩はどのようにするのか。そして母子もいつも命をがけて移動している”。 "ブライン!母グマのアザラシ狩が下手だったらどうなるの?” "乳の出が少なくて、大きくなれない。生き残るのは無理だな”。なぜか「生き残る」と言う言葉に重さを感じる。極北の厳しさゆえなのか。 ブライアンの説明は、信じることにしている。本の引き写しで話す学者に比べて、いつも具体的である。365日、極北の自然の中で過ごしていれば、体験に基づいて話すほかない。そして自説を曲げることをしない。それが時には、頑固者とも思われる。
彼の家へ行くと、大変な読書家であることが分る。それに書き古したノートがぎっしりと積まれている。 見かけは大雑把に見えても、本当は地道な観察者だ。日々の観察を欠かすことがない。彼と極北について議論をしても勝てっこない。 若い頃、船乗りとして世界を回っていたと言う。それあってか、海岸で拾った古いロープや船具が飾ってある。ほかに、財産など全くない。とう言うわけで、いつも明るい。 ”俺は、貧乏さ!何にもない。夏なんか、何日もパンとチーズだけのこともあるんだよ"と言いながら笑っている。
誕生の時、兄弟クマはいなかったのだろうか、何故一頭なのだろうか? 子グマを一頭連れた母グマは、11月半ばというのに腹をすかして海岸をあてどもなく歩き回る。 最初に訪れた1997年、10月の下旬ともなると海は凍り始めて真っ白だった。2006年、凍らないハドソン湾を前にして、母グマにとって絶望の日々が続く。 (つづく)
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(C)1997-2006,Hisa.