チャーチルの夏、命輝くところ

 

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シロクマの涙

地球温暖化〜何か変だぞ、ここ極北の村・チャーチルでも

何千年も昔のことだ。中国の皇帝達は、未来を知るため占い師にたずねた。今はこのような習慣はないが、未来を知りたいと思うのは今も同じだ。この先、私達人間には、何が待ち受けているのだろうか?どんな素晴らしい未来が待っているのか、それとも恐ろしいこともあるかもしれない。不安をかきたてるような兆候も数多くある。

2003年は、異常気象による地球温暖化が新聞紙上で騒がれた年であった。この年に、極北へ行けたのは幸運としかいいようがない。写真も今までになくたくさん撮れたし。

ここ数年、世界中で、台風、地震、大雨、、旱魃などが起きている。

(その二) チャーチルの川で泳ぐ〜何か変だぞ  NEW!! 8月31日2005年

日本の8月は炎天下でじりじり焦げるようだが、チャーチルでは、汗をかくことはない。朝夕は、10℃以下である。それでもシロクマにとっては暑く、でへばっている。写真撮影となると手袋やパーカーは欠かせない。それと、シロクマ対策用の銃である。弾丸も20発くらいは常に身に着けている。町のどこを歩いても、シロクマ注意の看板が立っている。

 

「シロクマ警告!歩くな」

   

”お〜い!Hisa!!水泳用パンツ持っているか?”とブライアンが電話をかけてくる。ブライアンだ。相変わらず彼の冗談は可笑しい。”パンツ持って来ていないけど、毛糸の手袋、毛糸のセーターは持っている”

”Hisa!これは冗談ではないぞ。今日は暑くなるから泳ぎに行こう。持ってきていなければ俺のを貸すよ”と言う。極北の川で泳ぐとは、とても理解できない。彼と一緒に行動するのが、この極北を知るのにはベストと信じているから行動は早い。”行くけど、俺は泳がないぞ。まだ凍死したくないから”と言うと、ブライアンは笑い飛ばす。

村からは車で30分ほど、秋や冬とは違って、どこを見ても色とりどりの花と緑の草で覆われている。車には冷房はついていないので窓も開け放しである。困るのは、よく飛び込んでくる大きな蚊だけだ。ここチャーチルは、冬の肌を切り裂く寒風と夏の蚊の大群には泣かされる。

  

気温25℃。高緯度なので紫外線が強い。サングラスなしではとてもいられない。太陽が、じりじりと焼けつけてくる。

極北で川に入ろうとする自分が不思議な時空間にいることを感じる。”自分の人生にこんな一ページを書き加えられるとは”目的の川は、11月に見た頃はすっかり凍土の水を集めてできた川、薄緑色をしているから冷たそうだ。相当な流量で流れている。その先はハドソン湾、川幅は20メートルくらいありそう。

川に着くや否や、ブライアンは川に飛び込む。”Hisa!!早く泳げよ!”と水の中から誘う。心臓麻痺でも起こしても、とても飛び込んで助けるには勇気がいる。足は着かないほどのようで、泳ぐには十分だ。

  

”Hisa! 飛び込め!それとも日本人は弱虫と村の人たちに言いふらしてやるか!”。我慢強いと思っているが、ここまで言われたら日本人の恥だ。変なところで自分が日本人である意識が強まるから可笑しい。これも極北にいるからだろう。

あまり気持ちよさそうなので、恐る恐る水に入ってみる。腰辺りの深さまで水につかるまでは、寒い。

泳ぎ始めれば、冷たさにも直ぐ慣れる。”どうだ、いい気持ちだろう"。川の流れは意外に早く、シッカリと泳がないと押し流されてしまう。

"この水はミネラルが多いから、後で肌がスベスベする。この水を日本に輸出して儲けろよ"。後で、身体にさわると本当にスベスベとする。それは翌朝まで続いていた。こんな水でエステ業でもしたら、女性はたまらんだろうな。

”ブライアン!いつも夏にはこのように泳ぐのか?"”ああそうだよ。でも夏に数回くらいだったが、最近は8回位泳げるな。暑い日が多くなったんだよ"。

気候が変わっていることを話す。”それにな、ここらでは、豪雪地帯ではないし、降っても風で吹き飛ばされてしまう。このごろの夏は、暖かいだけでなく雨が少ないので、湿地帯が減ってるんだよ”と不思議そうな顔をする。

暑い夏は日本だけでなく、こんな極北まで広がっているのか・・・・。

永久凍土が続くこの地域では、湖沼と言っても浅く、氷の上には泥炭層やコケや小さな草が覆っている。まるで氷や泥炭が大きな洗面器の底を作っているようだ。さらに草が敷き詰められている。冬には凍り付いて、スキドゥー(スノーモービル)や雪上車が自由に走る。が、夏になるとこの洗面器の中の浅い水が温まり、これが小さな小川をたくさん作る。

気になるのは、氷がもっと解けると泥炭層が分解して、メタンガスを発生させると言う。メタンは、二酸化炭素に比べると、20倍以上温暖化を加速させる。いったいこの先はどうなるのだろうか...。

 

 

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(C)1997-2006,Hisa.