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地球と太陽のささやき、オーロラ  

写真撮影(その六)                              
―咳、これはオーロラが出る予兆だ?―


天空に不思議な冷たい炎が、
音もなく揺らめく。
ツンドラの舞台で始まる光のショウ
極北の凍った特別観客席に
置き去りにされた僕達のために…・

  *
十一月のチャーチルは、太陽は時々しか顔は見せない。それも三時になれば、陽は落ち始める。

前日に,撮影のために荷物を運び込んでおいた小屋に向かう。   "クマのチェック!お願い"と呼びかけるのを忘れない。

大きなトラックを,ベランダの東にピッタリつけ,東からは,シロクマが入れないようにする。小屋は西と北にL字型に建っているから、あとはベランダがある南側さえ防備すればいい。南側の凍った湖面にカメラが設置されている。

ベランダから十メートル離れていようか。カメラの周りと湖側に,ハリネズミの板を並べる。花を生けるときに使う剣山に似ている。シロクマが進入してこないよう、ガラス窓の下にもハリネズミを張り巡らす。さらに鉄条も張る。

"アレー!咳が出るよ。こんな夜には、いつもオーロラがよく出るはず゛と言っても,二人は、信用してない。見上げる空に雲が立ち込めているのを見れば信用するわけがない。今までの経験によると、オーロラと咳は相関関係が高かった。それは温度がマイナス20℃もなると、空気中の水分が,雪かダイアモンドダストなり,地上に落ちる。そのため空気が乾燥するので,吸い込むとよく咳が出る。
オーロラは、温度が低く風のない夜に観察しやすい。風は吹けば雲を運んできて、オーロラを隠してしまうからだ。

すっかり暗くなった夜空を見上げながら、"まだ雲が多いから今夜もだめかな・・"とつぶやく。
昼間、ブライアンが,雲を見ながら、"今夜から二日間だけ天気いいぞ!その後は、低気圧がきて、天気は崩れる゛と言っていた。極北の達人・ブライアンの予想は,確かだ。

犬を飼っている彼は,一年三百六十五日、どんな天候だろうが休日はない。猛烈なブリザードの時に、犬に餌を与えにいくのに何回も付き合った。少しでも、極北の大自然の中での体験をしたいからだ。体験が伴ってこそ真の知識と言える。本を読んだり、話を聞くだけでは,本当にわかったことにならないと信じて。
"今夜から二日間だけ天気いいぞ!"とその言葉を信じよう。
   *

"Hisa!クマのチェックお願い゛と言って、Yさんは、カメラを調べるために凍結した湖に出る。勿論,クマ撃退用「ホーン」、「ガス・ベア」と懐中電灯を忘れない。

"Yさん!少し雲が薄くなったようだよ""うーん。そうかな〜。何ともいえないな゛"アレー!見てごらんよ。星が見えるじゃない?"とわずかな変化も喜ぶが、そうはオーロラは姿を現さない。

仮眠を取るが,交代時間を決めたわけではないが、誰かがおきる。"クマチェックお願い!゛"OK!さ"と、誰かが助ける。

撮影を始めてからそんなに日はたっていないがいつの間か三人には連帯感が沸いてくる。お互いに経験の多寡などではない。(続く)


 

 

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