チャーチルの夏、命輝くところ
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チャーチルの夏、そこは命が輝くところ
 極北では尺度が違う

(その四) マディの蛙が死んだ

人とよい出会い、そして心のふれあいは不思議な力を秘めている。それは高価なブランド品、高い車を持つこと、そして大きな家に住むのとは違う。どんなに物質的な豊かさをたくさん持っていても、心の豊かさとは言えない。

今日のように混沌とした時代では、いくら物があっても人を孤独に追いやっていく。自分の居場所すら見失っている人がいる。

ボランティア活動も、心のふれあいをもとめているのかもしれない・・・

  *

シロクマに出会えると言えチャーチルへ、何度も来る気になるのは常宿の家族に会えるからだ。

8才の娘マディも辺境の地への旅人にとっては、力強い心の支えだ。朝、子供達と一緒に朝食をするとき、騒々しいなかにも家族の暖かさを感じる。

"マディ。大きくなったら何になりたいの?"ときくと、"動物学者になりたい。それもアマゾンの動物を研究したいわ゛と言う。その割には,一番好きな動物は何?と聞くと、キリンと答えるところがおかしい。"マディ。動物学者になったら、Hisaを案内してね゛と約束する。

日本の子供たちとは話の内容は大違いだろう。人気歌手、お洒落の話などばかりだろう。テレビ番組もあまりないチャーチルでは自分の夢を追いかけていくほかない。

いつも日本に帰るとき、マディは、休みの日でも、考えられないほど早く起きてくる。この前の旅もそうだった。寝ぼけ眼で、階段を降りてくる。

"マディ!どうしたの。こんな早くおきて?学校は休みでしょ"というと、彼女はいつも"Hisaに、さよならのキスしたくて"とパジャマ姿で言う。

"ありがとうね。マディをバックに入れて日本へお土産として連れて行こうかな"、と言いながら彼女のほっぺにキスをする。彼女は、まだ外国には行ったことがない。

"Hisa! 今日、飛行機がチャーチルにこなかったらどうするの?"と訊いてくる。

"そうだな。日本へ帰るのやめて、チャーチルに住んでしまおうかな"、するとマディは,いつも目を輝かせる。"やった"ママ〜!!Hisaチャーチルに住んで、チャーチリアンになるんだって"

いつも別れはこの繰り返しである。チャーチルの空港を飛行機で発つとき、胸が熱くなり、窓から見える町は、いつも涙で曇る。


    *

"ママ〜、ママ〜!"とマディが大声でわめいている。" 蛙が死んじゃった!!!!"と、泣き叫んでいた。"マディ!どうしたの"と外へ飛び出してきくと、さらに大声で泣く。

昼間,友達と元気良く遊んでいたのに、どうしたのだろう。"蛙は、どうして死んだんの"ときく。マディは、"だってこの蛙、捕まえたとき、生きていたのに、外に置いといたら死んじゃったの"と、フランス系特有な透き通るような真っ白な顔をくしゃくしゃにしていう。

見ると、蛙は動いていない。動くどころか、冷たく石のようにカチカチになっている。夕食を作っていた母親のアンがやってきて、"蛙を、家の中の暖かいところへおきなさい。泣くのじゃないよ"と言い聞かせる。娘の泣くのを少しも気にしていないようだ。

暖かい家の中に、蛙を30分もおくと蛙は生きかえった。外に置いておいたので、凍ってしまったのだ。と言うより、冬眠し始めていたらしい。

夏といっても、突如として雪が降ったりする極地だから理解はできる。死んだような凍った蛙を暖かいところに戻すと、また動き出す。まるでマジックのようだ。

このように、チャーチルなど極北の生きものは、予想もつかない能力を備えている。気温が低下すると活動を完全に停止するもの、身体の代謝活動を低下させるものもある。様々だ。魚や昆虫のなかには、どんなに温度が下がっても、身体の細胞が凍ることのない物質を持っているそうだ。

こんな極北でも、バッタ、蛙、淡水魚などを見ることが出来る。

夏と言っても、いつ冬になるか分からない。これらに対応できる生きものだけが生き残る。生物の多様性を考えるとき不思議な思いにとりつかれる。

同じ型にはめ込む教育で、同じ勢いで仕事して頑張った日本、少し無理があったのかな。

続く
(次回は、痒い蚊の話をしよう)

 

 

しろくまとのおはなし

  つたない文でもあっても                              へたくそと言われても気負わず伝えてみたい                  混沌とした時代                                   心通じる人がいればよい                             一人いればよい。二人いたら、財産家。

こんな写真が出来ました

(2)自然は 不思議だね

 

 

 

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